それまで動かなかった足はまるで嘘のように動いた。言われた通りに膝を折り、桜の木を見つめたまま息を殺してあの音が奏でられるのを待っている。
「聴かせてやろう、思う存分。今度は立ち去るなどと言えぬように、その魂に刻んでやる」
いつもの位置に、妖琴師が座る。優雅に袖を翻し、見せつけるように琴を構えて。僅かに見えた御魂の発動に、私は息を飲むしかない。
「ほら、近くに寄れ」
聞いてはならない。行ってはならない。そう思うのに、身体は自然と前に進む。
人を狂わせる音律の持ち主。それに加えて、人を狂わせる効果のある御魂を混ぜれば、一体どれほどの効果となるだろうか。それを今から味わうのだと思うと、ゾッとした。
「捕まえた」